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オースティンの空港にドイツから帰ってくるエリカを迎えに行った。エスカレーターを降りてくる彼女は、グレーのちょっと「もっさりした」大き目のバッグを持っていた。ふ~ん、あんな形のバッグが好きなのか、働き始めたら趣味も変ったのかと思ったが何も言わなかった。 彼女の方から言い出した。「これはPippa Middleton(イギリス王室ウィリアム王子の義妹)が好きなバッグで、そのままピッパという名前になってるの」 「へー、そうなんだ。どこの会社」 「Modaluというロンドンの会社」 「聞いたことないなあ」 「すごく人気があって、買うのが大変だったのよ。彼が買ってプレゼントしてくれたんだけどね」 そう言われて、点検してみると、ピッパーじゃない、ジッパーが太くて壊れる心配をしなくて良さそうだ。書類やモノを入れるスペースもありそうだ。 「仕事用によさそうなバッグだね」 「東京の出張にも持っていって便利だった。ちょっと重いけれど、それは皮でできてるんだから仕方ないわ」 ジッパーにこだわるのは、どの程度のジッパーを使っているかで、製品の質が分かるからだ。この会社は貝のパターンがシンボルになっているようで、ちっちゃな貝の留め金が幾つも付いている。 「Coachより安いかもしれない。Coachも昔と違って、あるものは800ドルとか、1000ドルとか、どんでもない値段がついているでしょ」 そうか、新しいブランドの到来だ。イギリスの「モノつくり産業」がこれで復活するかもしれない。 ピッパの靴、ピッパの歯磨き粉、ピッパの車、、、等々。可能性は無限に広がる。 考えてみれば、ケリーだ、バーキンだと大騒ぎする、あのバッグは決して「オモシロイ」、ファッショナブルなバッグではない。「高価、希少、変化しない、それを知る人同士が認め合う」ネオ貴族趣味みたいなものだ。そこへ行くと、ピッパは大衆文化のシンボルとなり得る。アメリカのライフスタイルビジネスではカーダシアン家族が、カラダを張って頑張っているが、ピッパのソーシャルステイタスにはどう抗っても敵わない。
by tomokoh9T
| 2011-12-17 11:41
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