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6泊8日で里帰りをした。
美術史のテストが6日に終わることがずっと前から分かっていたので、終わり次第出発してクリスマスの前に帰って来られるように計画して切符も手配してあった。ところが、デイヴの父親の癌細胞が頭部に転移していることが7日の午後にわかった。10月には「今や私は癌とは無縁のきれいな体です」と宣言していたのに。緊急の手術が必要かもしれないとデイヴは8日のお昼頃、カリフォルニアに向かった。 日本に出かけて良いものかどうか、旅行をキャンセルして家で待機すべきかどうか、でも、キャンセルすれば二年ぶりで私に会えると、楽しみにしてずっと待っている母や姉たちが随分がっかりするだろうと一日中ずっと考えていた。幸い、8日にタイがオレゴンから帰り、また、義父の手術も最新のガンマ・ナイフに依るもので、頭を開いたり、麻酔をする必要がないので急転の可能性が少ないことがわかった。「とにかく、日本には行ったほうがよい」とデイヴも勧めてくれたので行くことにした。 成田に降り立った途端、アメリカでの生活が時間のひだにたたまれてずっと日本で暮らしていて何事もなかったかのように思えた。出迎えてくれた姉と義兄も2年前と変わっていなかった。しかし、母は変わっていた。たったの2年なのに、その時間の重みは母の背中を見れば明らかだった。「自分でもびっくりしちゃうんだけど、数えで90歳になるのよ。随分長くいきちゃったものだ」と言った。 「お母さんは顔色も良いし、腰は曲がっているけど元気なのよ。何でも自分でやりたがって時々心配することがあるんだけど」と姉がいった。 「よく怒られるの」と母。 座っていた椅子から突然転がるようにして母は立ち上がると布団の敷いてある部屋に向かうので、私もよろよろと付いて行くと、子供がいたずらを見つけられたというような困ったような笑いを浮かべて何か筒のようなものを取り出した。血圧計だった。それを腕に巻いて、もう片方の手で着てている下着やブラウスをめくり上げた。3枚か、4枚か、重ね着しているので随分ぎこちなさそうに見える。「なんでシャツをめくりあげなくちゃいけないの?」 「うーん」と言ったまま返事をしない。そのうちに血圧計はブーン、ブーンと音を立てて、そしてトクッ、トクッと二度三度すると止まった。 「上は138、下は112」とか言うと、「あんたも計ってみる?」と訊く。 「うん、やってみて」と言うと、私の腕に黒いベルトのようなものを巻いて、「それを胸の近くまで持っていって」と指示した。 「私もセーターめくりあげなくちゃいけないのかしら?」と言うと、母はニカッとしたまま無視した。 「上が104、下が69。随分、低いねー、低血圧だわ」と断定した。 姉から聞いていたので、「これを毎日三回つけて、折れ線グラフをつくるんでしょ」と言うと、 「赤と青と黒と三色で色分けしてね。それを先生に見せると、先生は『お元気で何よりです』って言うのよ。それ以外に言うことがないんでしょうね」 「そう、お元気でなによりです」と私。 「お母さんは完璧主義者だから理想値が出るまで何度も計るみたい」と姉が教えてくれた。 母は数値に随分詳しい。そういえば、デイヴの父親も医療関連の情報にはやけに詳しかった。義母が病気にでもなろうならば治療法などを必死に研究していた。ある時には、「この病気はナイロンの下着がいけないんだ」と私に説明したこともある。 私の普段の生活では若者のお腹を満たすこと、学校でのできごと、スポーツ、政治などに話題が集中して、病気や体のことを格別話題にすることはない。怪我をすればそれを治すだけ、そして走り出すだけ。若者のいない家の中は「もう一枚着て」「肩が痛い」」脂肪の取り過ぎ」と体関係の話題が主だった。 「いくら高い化粧品を使っても顔のシミが消えない」とこぼす母に姉が「大丈夫よ、高い化粧品つかってるんだから」と大きな、元気な声で言った。
by tomokoh9T
| 2007-12-19 21:26
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